蒟醤(きんま)
蒟醤は、漆器の加飾技法の一つで、「金間」「金磨」「金馬」といった異なる表記もされます。この技法は、タイのチェンマイ地方、ラオス、ミャンマー(旧ビルマ)などで発展し、中国に伝わって「填漆(てんしつ)」と呼ばれるようになりました。日本では、茶人たちがこの技法を取り入れ、香合(こうごう)や食籠(じきろう)などに転用し、愛用しました。
江戸時代末期、高松の玉楮象谷(たまかじ ぞうこく)(1805~1869)は、この技法を研究し、模倣して優れた作品を制作しました。彼の功績によって、この技法は高松地方の伝統工芸として確立され、現在に至るまで受け継がれています。
素地には主に籃胎(らんたい)と呼ばれる、竹を編んで作った骨組みが用いられます。その表面に漆を塗り、文様を刀で細かく線刻し、そこに朱・青・黄などの彩漆(色漆)を埋め込みます。さらに、表面を研ぎ出して文様を浮かび上がらせたり、もう一度漆を塗ってから研ぎ出したりして仕上げます。
文様の意匠は、小花や葉、十二支にちなんだ動物、人物などが多く、空間を余すことなく埋め尽くすように緻密な連続模様が施されるのが特徴です。